神戸製鋼の不正について考える事(特採と工程保証について)

退職日記
特採について

随分と前から話題となっている神戸製鋼の不正問題

”特採”という言葉で、規格外のものを、

顧客に収めていたといいますが、

大まかに分けて、特採には3つの種類があると思います。

  1. 顧客への報告⇒了承を経て納入
  2. 社内での経験則による数値改ざん(機能的な問題なし)
  3. 確信犯的に規格外のものを改ざん

さて、特採の話に入る前に、

まずはリードタイム(納入までの時間)について

説明したいと思います。

 

リードタイムについて


通常、見積書や納入契約書で定められる、

リードタイム(納入までの時間)は、

  • 在庫がある状態(受注⇒運搬の時間⇒納入)
  • 在庫がない状態(受注⇒生産の時間⇒運搬の時間⇒納入)

の二つに分かれると考えられます。

まあ、営業が結ぶリードタイムは結構きつくて、

顧客の希望に沿うように、

在庫がある状態でのリードタイムに

することが多いのですが、

そういう時は、顧客からの受注見込み(フォーキャスト)

顧客から確認して、事前に製造をします。

 

顧客への報告⇒了承経て納品する場合

通常通り、規格内の製品を治めていれば、

問題ないのですが、

微妙に不純物の含有量が高い等の

軽微な規格外が発生する場合があります。

 

もちろん、本来であれば作り直したり、

手直しをする必要がありますが、

納期内に収められなければ、

顧客(納入先)の原料が足りず、

その先のお客さんへ最終製品を納入できない。

特に、ボーナス後やクリスマス商戦なんて時に、

物が作れなければ損害賠償を払わなければならない

可能性もあります。

 

そこで、規格から外れた状態でも、

顧客が使いこなせるならば(ここが重要)

納入させてもらう。

ということで、お客に状況を報告して、

納入するという形になります。

 

特採っていうと、

かなり悪いことをしていると思われますが。

実際には、

一斗缶に入った製品の缶が運搬中に凹んだけど、了承を得て

納入したというのも、立派な特採です(中身は問題ない)。

※ちなみにダメな場合はもちろんあります。

 

こちらの場合は、特に不正ではなく、

販売者と納品者の双方の了承を得ているので

取り引きとしては問題ありません。

 

神戸製鋼の社員が語っていて、

問題ないと言っているのはこのパターンですね。

 

社内での経験則による数値改ざん

さて、こちらは限りなくグレーに近い黒の特採です。

一緒に使えば問題ない場合


例えば、遠心脱水(水分を飛ばす工程)を行う製品があって、

その製品が吸湿性(空気中の水分を吸う性質)の時、

規格が純度90%として、定量分析(含有量の分析)をした時に、

純度が89.90%でした。

実際にその製品を作る場合、実績値として

89.5%~92%程度だったため、

今回のLotと他のLot(純度91.00%)を

同時に出荷すれば問題ないと判断できたので、

今回のLotについては、90.10%と改ざんして出荷しました。

 

この場合については、Lotの付け方に問題があるだけで、

実際に別梱包に入れ直して混合すれば、

規格内になるという論理です。

※今回は別梱包に入れ直していないです。

あくまでこの場合については、

悪質性は少ないと私は考えます。

 

製品を規格内に収めるのが難しい場合①


さて、上記製品を作る際に使っていた

遠心脱水機の性能経年劣化により低下しました

その結果製品の純度の実績は

89%~90.5%となり、

規格(90%)を下回ることが多くなりました。

さて、こうなってしまうと、

  • 遠心脱水工程の時間を延ばす
  • 遠心脱水機の修繕もしくは買い替え

を行わなければなりませんが、

リードタイムの関係上、

工程時間の延長や修繕をすれば、納期を守れません。

ここで顧客へ正直に伝えれば、何とかなる。

と通常は考えられますが、

  • 二社購買をしていて、ライバルにシェアを取られる。
  • 納期遅延による信頼関係の喪失
  • 業績低下による上からの叱責

等の理由から、以下のような意見が出る場合があります。

以前89.90%の製品を特採にしていたのだから、

今回も良いだろう。

 

最初は、問題と感じられていたことが、

何度も行っている間に慣例となり、

89.5%程度の製品でも、

出荷実績内として出荷されるようになります。

 

こうして、不正は当たり前となり、

新入社員が疑問でも上げようものなら、

今まで実績として大丈夫だったのに、

何も知らない奴が分かったようなことを言うな!

みたいな状況になっていきます。

 

こうなると、もうグレーに近い黒から真っ黒に

真っ逆さまです。

 

製品を規格内に収めるのが難しい場合②


さて、①の場合は最初は規格内に収められていた製品が

設備などの問題によってできなくなった場合です。

 

ちなみに、不純物などの場合は、

原料の調達元が変わったりした場合などで、

結構規格内に収めるのが大変になる場合があります。

 

例えば、中国から輸入しているある金属が、

輸出制限で手に入らなくなり、

やむなく他国から輸入することになりました。

 

顧客との取り決めでは中国産の原料しか

使ってはいけないことになりますが、

4M(原料などの重要な要素)変更の申請基準が厳しく、

工場内で、勝手に原料の変更をしてしまいました。

 

後でわかった事として、

中国産の原料は鉛が低く、

他国の原料は鉛が高いことが判明しました。

 

技術力や会社に余力がある場合は、

使いこなしが出来る(規格内の製品を作れる)のですが、

出来ない場合は、推して知るべし(規格外の隠蔽)

になるのでしょうか。

 

ちなみに、例に挙げた鉛はRoHS指令という法律に

引っかかるもので、

電化製品とかには入っていてはならないので、

こういった致命的な不正の場合だと、

顧客や顧客先の受け入れ検査などで判明して、

社会制裁を受けることになるでしょう。

 

 

製品を規格内に収めるのが難しい場合③


さて、上記①、②は結果的に規格内に収めるのが

難しい場合の例となりました。

 

今回の場合は、

最初から無理な注文を受けてしまった場合です。

 

例えば、今まで工業化学程度の分野向けの製品で、

いきなり車業界への参入を決めたとします。

 

工業化学の分野で必要とされる工程能力指数が

1.00<Cpと仮定して、

不良率が0.3%以下

 

車業界で理想とされる工程能力指数が

1.67<Cp

不良率が0.000057%以下

 

簡単に言えば、今までに比べて、

とんでもない精度を求められるということです。

 

さらに車業界になると、

IATFやら、原料供給先のISO取得の義務等、

とてつもない規格が入ってきます。

 

今までそういったことの準備や対策をしなかったところに、

いきなりそんなことを言われても、

現場では対応しきれません。

 

こんな例はとても極端ですが、新規参入を行う際や、二社購買が絡んだ場合

営業がかなり無理な条件で案件を引き受けて、

現場が地獄を見るなんてことはよくあることです。

 

工程保証について(検査飛ばし)

製品を製造している間に、工程が安定した場合


さて、よく騒がれる、

やるべき検査をやらなかったですが、

工程保証という言葉を聞いたことがありますか?

 

製品の立ち上げのさい、

工程内の結果と規格のデータをまとめて、

工程能力指数を計算して、

その結果を元に、

顧客と規格項目と検査について取り決めを行います。

こうして出来上がった規格と検査基準ですが、

実際に製品を製造している間に、

工程自体が安定していき、不良率が十分に低くなることがあります。

こういった場合は正規の方法として

顧客へデータを提出して、

問題ないことを説明したうえで、

数Lot毎に1回抜き取り検査を行う等の処置へ変更します。

 

しかしながら、

実際のところ顧客からの了承を得ることはかなり難しく、

(分析しなかったLotに何かあったらどうするのかの説得)

社内から、

今まで問題なかったのだから工程を省いてはどうか?

なんて意見が出る場合があります。

 

私も品質管理の部門にいた期間が長いのですが、

品質面での付加価値を与えているはずの部署なのに、

会社からはその当たり前についての重要性を忘れて、

会社が忙しい時や人手不足の時に、その価値を軽視して、

生産性に傾向する方向に向かってしまうことがあります。

 

こういうことの恐ろしいところは、

その時は十分な工程能力を有していても

熟練者の退職や設備の劣化が発生した時に、

冷静に全数検査に戻せるのか?

 

おそらく、今までの経緯で部分的な検査もしくは、

検査自体をやらなくなってしまった状況では、

元に戻すのは厳しいでしょう。

※最悪、検査できる機器や能力を有する人員が

切られていなくなっている可能性もある。

 

そして、

顧客の受け入れ検査などで不正が発覚した際のダメージは

計り知れないほど大きなものになると考えられます。

 

品質管理の人間が出来る事

私も若い頃に、営業から品質管理部門に異動になった後、

ある製品について、規格外のため不適合と報告しました。

課長からは、

『そんな簡単に不適合というな』

と言われ、結果的に特採になりました。

 

営業をしていた時の顧客に対して

とても申し訳ない気持ちになり、

その後は、現場巡回や課のミーティングで

4Mに関する変更を察知したり、

過去の不具合と同様の問題が発生した時は、

自主的に現場に足を運んで、製品の分析をしたり、

先に不具合が出ると思われる項目の検査を行い、

取り返しのつかない状況になる前に、

課長へ経過報告を行うことで、

不具合自体の件数を減らすようにしました。

 

残業代が出ないような会社でしたが、

そういったスタンドプレーが許されたことについては、

感謝しています。

 

ただ、やっぱり製品が完成してしまうと、

特採にならざるを得ないこともあったので、

焼け石に水感は否めなかったです。

 

後に、クレームの多発などで、

品質重視と言われるようになりましたが、

結局のところ、

業績が落ちるとその分利益を求めるようになります。

貧すれば鈍する。

その言葉がふさわしい状態になってしまうと、

自社の製品に対する誇りや意義を失い、

結果的に付加価値を失っていきます。

付加価値を失った製品は値打ちを失い、

結局売れなくなる。

 

平家物語の栄枯盛衰、驕れるものは久しからず。

そんなことにならないように、

それぞれ責任を持って業務を行いたいものですね。

 

…といっても、私はリタイアした人間なので、

こういったことを書くことぐらいしかできないのですがね。

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madのアーリーリタイア日記

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