石川県の製紙工場の『中川製紙』の事故について思うこと

退職日記

たまたまテレビを見ている時に、

石川県の製紙工場で『タンク内に人が入って死亡』

というニュースを見ました。

 

今まで、何回も同様の事件が起こっているので、

また起こってしまったかと思いつつ、

亡くなられた方々のご冥福をお祈りさせていただきます。

 

職場の安全サイトをまずは見てみましょう

まず初めに、以下のサイトを見ていただきたいと思います。

 

厚生労働省のサイトです。

『職場のあんぜんサイト労働災害事例』

職場のあんぜんサイト(過去事例)

※外部サイトですが、厚労省のサイトなので安全です。

このように、厚労省でも事例が紹介されるほど、

とても有名な事故の事例です。

 

硫化水素について


まずは、硫化水素について簡単に説明しますね。

 

①硫化水素が発生する状況

硫化水素とは、硫酸を金属とか紙等と

反応させたときに発生するガスです。

 

②硫化水素ガスの重さについて

まず初めに、風船などに入れられているヘリウムガスは、

空気より軽い気体なので浮かんでいます。

逆に、硫化水素の分子量は約34と、

空気(分子量約29)より重いです。

ということは、タンクなどの密閉した空間の中では、

下の方にたまってしまいます。

特に今回のように、紙に硫酸などと反応させる場合、

タンク自体はしっかりとした構造になっているので、

タンク下部には高濃度の硫化水素が溜まっていたと推測されます。

 

③硫化水素の臭いについての罠

おそらく、学校の授業では、

『硫化水素は強い腐乱臭がする』と書かれていて、

実際に臭いも嗅いだ人もいると思います。

あの臭いはとても強烈で、一度嗅いだら忘れられないです。

ただし、硫化水素の性質として、

『嗅覚の麻痺』という効能があります。

そのため、高濃度の硫化水素が発生している状態だと、

嗅覚がマヒして逆に臭いがしないと言う状況に陥ります。

特にタンクの中では、ガスの重さの関係上、

いきなり濃度が高くなる危険性があるので、

こういった状況に陥りやすいです。

 

④死亡のリスク

これは硫化水素に限ったことではないですが、

密閉したタンク内の酸素濃度が低い状態で、

タンクに入ってしまった場合、

自力で脱出することは不可能に近いです。

また、防護服なしで高濃度の硫化水素に暴露した場合、

皮膚が侵されてしまいます。

 

ちなみに私が勤めていた2社目では、

タンク内を窒素置換する作業がありますが、

その後に原料を投入する際に、

死ぬから絶対に窯を覗くな』ときつく新人に教育します。

窒素で満たされた釜の中の気体を一回呼吸しただけで、

意識を失って窯の中に落ちる危険性があるからです。

無害と言われる窒素ですらそれほどの危険があるのに、

さらに有害な硫化水素では、推して知るべしです。

 

タンク内で仲間が倒れた場合に出来る事

タンク内で仲間が倒れてしまった場合、

すぐに内線でも何でもよいので、119番通報してください。

間違ってもタンクの中には入ってはいけないです。

確実に死にます。

 

救出する場合は、

  • 送気マスク(ボンベが付いたガスマスク)
  • 防爆が出来る防護服(硫化水素による皮膚浸食防止)

の二つが必要になりますが、

そもそもそれが工場内のすぐわかる場所にあって、

すぐに着用できることが前提になります。

 

ちなみに、私も訓練で防護服+送気マスク着用を

したことがありますが、

補助の人がいる状態でも5分はかかっていました。

その状況からさらにタンクに入って救出となれば、

早くても10分以上は時間がかかると思います。

タンクの中には硫酸も含まれている為、

その間に倒れている人は薬傷等で

取り返しのつかない状態になっていると推測されます。

 

せめて命綱でもつけていれば、

引っ張り上げることが出来るかもしれなかったですが、

その場合でも、皮膚が侵されるなどしているかもしれないので、

適切な処置が必要となります。

 

でも、実際に貴方がその状況になった時に、

仲間がタンクで倒れていて見殺しに出来るのか?

 

出来ないからこそ、こうやって二次被害が出るんだと思います。

人として当たり前の行動をとって、

二次被害にあう、本当に痛ましいことだと思います。

 

そもそもどうすれば良かったのか?

結局のところ、

高濃度の硫化水素が溜まっているタンクに入った時点で、

詰んでいると私は考えます。

 

私が取得している有機溶剤の作業主任者でも、

こういった事例については絶対に説明されるのですが、

『安全が確認出来ないタンクには入らせない』

が大原則です。

 

そのために、出来ることとなりますが。

 

①安全教育を行う。

特に新入社員はもちろん、

仕事に慣れてくるとこういったことに対して、

危険性を感じにくくなるので、

『死亡リスクがある』ことを

しっかりと教育しなければなりません。

これをやらないと、

先輩から入って来いと言われ、入ったら倒れて、

命令した先輩も責任を感じて助けようと中に入って

共に亡くなるということが無くならないと考えます。

 

②酸素欠乏危険作業主任者等、管理者を現場に入れる。

案外守られていないのが、

作業主任者の選任を行っていても、

すぐに対応できない状況で、

名ばかり主任者として、現場に名前だけ置かれていて、

実際には作業場にいないという事例があります。

作業主任者は、上記に上げた通り、

酸欠などについての講習も受けているのですが、

そういったことについて、他の人を教育していない状況で、

主任者不在で作業していれば、

当然やってはいけないことをしてしまうリスクが発生します。

 

特に人手不足などで、交代勤務をしている場合は、

そういった名ばかりの主任者で何とかしてしまおうとする傾向があると、

勝手ですが、思ってしまいます。

 

③タンク内の酸素濃度計測後に保護具をつけてタンクに入る。

ある意味基本のはずなのですが、

守られていない場合があります。

保護具って、身を守るためにつけるのですが、

危険な場所に対するものってやっぱり厳重になる分

装着するのも大変になります。

逆に言えば、それだけ厳重に対策しなければならないところに、

無防備で入ろうなんていうのは無謀としか言いようがありません。

 

酸素濃度については、タンク内は逃げ場がないので、

命を守るためにもしっかりとしてもらいたいものです。

 

 

結局このような事件が起こった場合誰が悪いのか?

私は会社が悪いと断言します。

従業員が勝手にやろうが何だろうが、

そういうことをさせるような体制にしているのは

非常に悪質で、無責任だと思います。

そもそもまともな企業ならば、

  • 安全教育、作業マニュアル(タンクに入る前にやること)
  • タンク内作業は絶対に一人ではさせない(先輩とやらせる)
  • 事故発生時のマニュアル及び対策、連絡方法の徹底
  • 送気マスクなどの保護具の着用方法や場所の周知

ぐらいはできるはずです。

それをせずに作業させて、人が死んだとすれば、

間接的に会社が殺したと言っても過言ではないと思います。

このような事故が二度と起きないように、

今回の事故を他人事とは思わずに、

注意喚起して、対策を行ってくれる企業が増えることを

強く願っています。

 

最後になりますが、

タンクで倒れて亡くなられた方、

そして助けようとタンクに入られて亡くなられた方に

改めてお悔やみ申し上げます。

このような事故が二度と発生しないことを強く願っています。

退職日記
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